生産管理支援
【農業の生産効率化へ】スマート農業法について分かりやすく解説
導入コンサルテーション
2024年6月、通常国会において「スマート農業技術活用促進法」(以下、スマート農業法)が可決されました。
今後20年間で農業従事者が1/4程度まで減少することが見込まれる中、生産者と技術開発者(企業)のそれぞれに認定制度をつくり、認定されると税制や融資などの支援措置を受けることができるというものです。
この記事では、スマート農業法がどのような制度なのか、施行の背景などについて説明していきます。
1. スマート農業とは何か
そもそもスマート農業とは何なのでしょうか。
この数年でよく耳にする言葉になりましたが、具体的に説明できる人は意外に少ないかもしれません。
簡単にスマート農業とは何かを説明すると、先端技術を使って農業をより効率的にしようという試みです。
例えば、IoTセンサーを畑に設置すると、土壌の湿度や温度をリアルタイムで監視できます。これにより、いつ水をやるべきか、どんな肥料が必要かをデータに基づいて判断することができるようになるわけです。
また、AIを使って過去のデータを解析し、作物の成長予測や病害虫の予測もできます。
ドローンはイメージしやすいスマート農業の手法の1つだと思います。広い畑を上空から監視したり、ピンポイントで農薬を散布したりすることがドローンの活用で可能になっています。
これまで、「経験」と「勘」で行われていた農業という世界にテクノロジーを組み込むことで、より効率的に農作業をしていこうという動きなんですね。
2.スマート農業法のポイント
今回の法律のポイントについては上でも説明しましたが、ここではもう少し詳しく説明します。
この法律は5月末に改正した食料・農業・農村基本法(新農業基本法)に関連して可決された3つの法案の中の1つなんです。
スマート農業法では、
①国がスマート農業技術の活用の促進に関する基本方針を定める
②生産者とスマート農機開発企業は、それぞれ実施計画を策定して、国(農林水産大臣)の認定を受けることができる
※生産者は「生産方式革新実施計画」、スマート農機開発企業は「開発供給実施計画」
③計画の認定を受けることで、行政手続きのワンストップ化や日本公庫の長期低利融資などの支援措置を受けることができる
ということが定められています。
行政手続きのワンストップ化
これまで、何か申請をする際には農水省+αといった形で、複数個所に申請をするものがたくさんありました。
たとえば、
・農業用ドローンの飛行許可であれば農水省+国交省
・養液栽培や収穫ロボットを使うような「農作物栽培高度化施設」に関する届出は農水省+農業委員会
などです。
今後は、これらが農水省への計画申請のみで行えるようになります。
「スマート農業技術活用促進資金」が創設
税制上の措置も設けられています。
たとえば、生産者がスマート農業技術が組み込まれた収穫機などの機械装置や環境制御装置を組み込んだ農業用ハウスを設置する場合、その取得価額の32%(機械装置の場合は32%だが、一部は25%で、建物物等、構築物の場合は16%)の特別償却が適用されます。
これは期間が限定的となるようですが(株式会社国際農業社が運営する「農村ニュース」ウェブサイトの記事によると、2027年3月末まで)、これからスマート農業を取り入れたい生産者にとっては非常に大きな措置になります。
3.施工された背景
この法律が施行された背景には、日本の農業が直面しているいくつかの深刻な問題があります。
①農業従事者の減少
今後20年で、農業に従事する人が現在の約1/4にまで減少することが予測されています。
これでは従来の方法では農業の持続可能な発展や食料の安定供給が難しくなるため、新しい技術を使うことで、農作業の効率化を図る必要があります。
②生産性の向上
効率的な生産体制を確立するために、スマート農業技術を導入して、生産方式の転換を進めることが求められています。
これにより、少ない労力で多くの作物を生産することを可能にしようとしています。
4.アクアポニックスへの関り
スマート農業法は、アクアポニックスにも良い影響をもたらす可能性があると考えています。
アクアポニックスはビニールハウスや建屋内での運営が基本となるため、スマート技術を組み合わせやすいシステムになっています。
実際に、私たちの農場ではアクアポニックス専用のセンサー、アプリとWEBカメラを用いた生産管理支援をすでに行っています。
※プレスリリース「アクアポニックスの生産管理をIoTで効率化する「アクポニ栽培アプリ」の提供を開始」
もう少し具体的に見ていきましょう。
①技術の導入促進
IoTセンサーやAIを使って水質や栄養バランスをリアルタイムで監視し、最適な環境を維持できます。 これにより、魚と植物の健康状態を常に最適に保つことができます。
②資金援助
スマート農業法に基づく低利融資や補助金制度を利用することで、アクアポニックスシステムの設置や運営にかかるコストが軽減され、大規模農園の導入が進むことはもちろん、小規模農家でも導入しやすくなります。
③持続可能な農業の推進
環境に優しい技術を導入することで、アクアポニックスの運営もより持続可能なものになります。 例えば、水の再利用や省エネ技術を活用することで、環境負荷を大幅に減らすことができます。
まとめ
5月の新農業基本法を含め、日本の農業の方向性が変わってきていると感じます。
農業全般の効率化が促進され、環境負荷の低減と持続可能な農業の実現が期待されている中、アクアポニックスが果たせる役割はとても大きいと思いますし、実際に果たしていかなければと決意を新たにしました。
農場見学では、実際にセンサーやアプリを見ることも可能なので、興味のある方はぜひ直接農場にお越しください。
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