導入コンサルテーション
【通年でオーガニックイチゴの収穫が可能に】アクアポニックスで甘いイチゴ栽培を実現
販売先開拓・物流構築
アクアポニックスでイチゴ栽培をしたい人
「アクアポニックスでイチゴの栽培ができるか知りたい」
「高単価の作物を作りたい」
「新規就農や新規事業を検討しているが収益性が心配」
本記事では、2023年3月から株式会社アグリ王との共同試験の結果を踏まえながら、こういった疑問にお答えします。
- イチゴ栽培試験の背景と結果
- アクアポニックスを活用したイチゴ栽培のポイント【3つ】
- 今後の展望
イチゴ栽培試験の背景と結果
・アクアポニックスによるイチゴ栽培の導入
イチゴ栽培は、その鮮やかな色と甘酸っぱい風味で世界中で愛されていますが、その栽培過程はしばしば環境に負担をかける要因となってきました。化学肥料や農薬の使用は、土壌や水質の汚染を引き起こし、持続可能な農業の実現に向けた大きな障壁となっています。
このような背景の中、アクアポニックスという革新的な栽培方法が注目を集めています。
この方法は水耕栽培と養魚を組み合わせたサステナブルな農法で、従来の農法に比べて水の使用量を大幅に削減し、化学肥料の使用も不要にすることができます。さらに、完全閉鎖型農場では、安定した環境で高品質なイチゴを一年中生産することが可能になっています。
・試験の背景と目的
イチゴはそのニーズの高さから、化学肥料を使った養液栽培が拡大傾向にあります。しかし、肥料の原料となる化石燃料は、近年の世界情勢の中で輸入量の減少や価格の高騰が起きています。また、冬の時期はハウス内の加温などによって温室効果ガスなどを排出してしまうことから、環境負荷が懸念されています。
アクアポニックスによる栽培技術が確立できれば、環境負荷を下げながらイチゴの栽培ができ、さらに生産者の収入増にも繋がるのではないかと考えました。
実証試験にいたる詳細については、コチラの記事をご覧ください。
・アクアポニックス産イチゴの分析結果
アクアポニックスで栽培されたイチゴは、糖度が高く、風味豊かな味が特徴です。昨年12月、センターにアクアポニックス産イチゴの成分調査を依頼しました。一般的なイチゴと比較した表が以下になります。
アクアポニックス産イチゴの方が優位性が高いものは赤字で示しています。特に顕著なのは果糖の高さです。一般的なイチゴに比べると約2倍となっています。また、カルシウムなどの栄養価も一般のものより高いか、同程度となっています。
一方で、クエン酸は若干低い値となっているため、酸味よりも甘味が強いイチゴと言えます。イチゴは酸味と甘味のバランスが重要なので、この点についてはまだ改善の余地があると考えています。
アクアポニックスによるイチゴ栽培は、栄養バランスが良く、植物にとって最適な環境が提供されるため、従来の栽培方法に比べて収量と生育速度が向上する可能性があります。また、アクアポニックスシステム内での環境条件(温度、湿度、栄養素の濃度など)を細かくコントロールすることにより、イチゴの品質や味を一定に保つこともできるようになると思われます。
アクアポニックスを活用したイチゴ栽培のポイント【3つ】
今回の試験では、3つの事がわかりました。
②環境制御が非常に重要
③害虫対策の精度が安定した生産につながる
それぞれについて説明していきます。
①魚の排泄物から生成される肥料のみで栽培が可能
今回のイチゴ栽培では、魚の餌以外の添加はほとんど行いませんでした。他の実物野菜などでは、魚の排泄物からでは生成できない栄養分が不足するため、有機肥料などを施肥することもあります。
しかし、イチゴはもともとECが低い作物ということもあり、毎日の給餌のみで十分な栄養素を作り出すことが出来たのではないかと考えられます。
実際にイチゴの水耕栽培の適正なEC値は0.5〜1.0mS/cm程度とされていますが、試験中のEC値もこの適正値内に収まっていました。
②環境制御が非常に重要
施設内では、水温と室温を常に一定にコントロールしています。そのため、気候変動や季節の変動に左右されず、一年中安定して高品質なイチゴを生産することができます。
今回の試験と並行して、自社農場のふじさわアクポニビレッジ(太陽光型施設)でもイチゴ栽培を行っていました。太陽光型施設でも秋~春にかけてはイチゴを収穫することができていましたが、やはり夏場は実がつかないのはもちろん、葉の成長も鈍化していました。
もともとイチゴは冷涼な気候を好み、夏の暑さに弱い作物です。ビニールハウスなどでは真夏だと高温になるので栽培可能期間は限られてきます。周年栽培をするためには、やはり完全閉鎖型での栽培が有利です。
③害虫対策の精度が安定した生産につながる
以前、弊社農場である湘南アクポニ農場で試験栽培した際には、害虫(アザミウマ、ハダニ)の被害があり奇形果ができてしまうことが多くありました。ふじさわアクポニビレッジに場所を移しての栽培では、防虫ネットやニームオイルなどの活用で奇形果は非常に減っています。
さらに、完全閉鎖型の施設ではニームオイル等を散布しなくても、害虫被害は全くありませんでした。
害虫忌避剤であるアロマニームなどを用いて防除することが大事
やはり、安定した周年栽培を行うには環境制御と害虫対策が非常に重要な要素となるようです。
今後の展望
・アクアポニックスによるイチゴ栽培の将来性
アクアポニックスによるイチゴ栽培は、現在、多くのポテンシャルを持ちながらも、まだ開発の初期段階にあります。この栽培方法は、水の使用量を削減し、化学肥料や農薬の使用を不要とすることで、持続可能なイチゴ栽培の手法となる可能性を秘めています。技術の進歩とともに、コストの削減や栽培技術の改善が進めば、より多くの農家や消費者に受け入れられるようになるでしょう。
また、都市農業や屋内農業としての応用も期待されており、限られたスペースでも高品質なイチゴを生産することができるため、食料供給の多様化と安定化を実現することができます。
・アクアポニックス産イチゴを世界へ
冒頭で述べた通り、日本のイチゴは非常に品質が高く、高単価が見込まれる作物となります。また、生産販売による収益以外にも、障がい者就労支援などの農福連携やインバウンド向けの体験農園など、様々な収益源の確保も期待できます。
さらに、完全閉鎖型の施設での栽培ノウハウを確立させることによって、これまでは気候や土壌などの条件からイチゴ栽培の難しかった乾燥地や熱帯地でも、ジャパンクオリティのイチゴを栽培することも可能になると考えています。
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