導入コンサルテーション
【野菜と魚のバランスとは?】システムを安定させるためのポイントを解説
農園デザイン・施工
アクアポニックスは、持続可能な農業の未来を拓く革新的な方法ですが、その成功の鍵は何と言っても「バランス」にあります。
この記事では、野菜と魚の理想的なバランスをどのように決めていくのか、硝化サイクルの維持から水質管理の重要性まで、アクアポニックスを最大限に活用するための実践的なポイントを解説します。
1.アクアポニックスの基本とバランスの重要性
- 1-1. アクアポニックスとは何か?
アクアポニックスは、水耕栽培と陸上養殖を組み合わせた持続可能な循環型の栽培システムです。
このシステムでは、魚の排泄物が自然の肥料として植物に供給され、植物はこの栄養を利用して成長しつつ、水を浄化します。これにより、魚と植物が相互に依存しながら健康的に育つ環境が整えられます。
この方法は土壌を使わず、水の再利用が可能であるため、水資源を節約し、都市部や限られたスペースでも効率的に食品生産を行うことができるため、新しい農業技術として期待されています。
また、農薬や化学肥料の使用を減らすことができるため、環境負荷を下げながら農業を行うことができ、安心安全な野菜を提供できることも大きな特徴です。
- 1-2. システムのバランスが成功の鍵
アクアポニックスシステムの成功は、バランスの良い生態系の維持に大きく依存しています。
魚の数、植物の種類と量、水の循環速度など、多くの要素が絶妙に組み合わさることで、システム全体の健康が保たれます。適切なバランスが取れていないと、魚はストレスを感じ、植物は栄養不足に陥ることがあります。
そのため、定期的なモニタリングと調整が不可欠であり、これには専門的な知識と経験が求められます。バランスを保つためには、水質の検査を定期的に行い、必要に応じて魚の餌の量を調整することが重要です。
2.導入時のレイアウトの決め方
- 2-1. 野菜ベッドの面積から魚の匹数が決まる
アクアポニックスにおいて、野菜ベッドの面積は非常に重要です。
これは、植物が必要とする栄養の量と、魚から供給される栄養のバランスを保つための基準となります。一般的に、ベッドの面積が広いほど、より多くの魚を飼育することが可能になります。この比率を正しく設定することで、水質が安定し、植物と魚双方に最適な環境が提供されます。
このバランスは経験とカンによって決められるものではなく、計算によって求めることができます。私たちは「バランスシート」と呼び、実際に農園導入時に使用しています。
このバランスシートはアクアポニックス・アカデミー内で使い方をお伝えし、受講後にはデータをお渡ししています。
- 2-2. 収量から全体の面積を求めることもできる
アクアポニックスシステムの設計では、最終的な収量の目標も重要です。バランスシートを使うことによって、希望する野菜の収量を基に、必要な魚の数と野菜ベッドの総面積を逆算することができます。この方法では、収穫したい野菜の種類に応じた栄養需要を把握し、それに必要な魚の生産量を計算します。面積当たりの野菜の収量は、必要な株間、葉菜類か果菜類か、などによっても変わります。例えば、果菜類の多くは葉菜類(レタスなど)より要求する栄養が多いため、必要な給餌量が変わっていきます。これを「給餌指数」と呼びます。どのような野菜が、どの程度の給餌指数となるかも、アクアポニックス・アカデミーの中で学ぶことができます。
アクアポニックス・アカデミーについてはコチラ
3.システムバランスを保つ方法
- 3-1. 硝化サイクルの維持が最も重要
野菜と魚のバランスが整っているだけでは、安定した生産はできません。
システム稼働後に最重要となるのは硝化サイクルを正常に機能させることです。硝化サイクルとは、魚の排出物中のアンモニアを硝酸塩に変換するプロセスであり、植物が吸収しやすい形の栄養を提供するために必要です。
フィルターに住み着く微生物がこのプロセスの鍵を握り、適切な環境条件下でのみ効率的に機能します。そのため、温度、pH、溶存酸素などを定期的に確認し、最適な状態を維持することが必要です。
このサイクルが適切に管理されていない場合、魚に有害なアンモニアや亜硝酸が蓄積する可能性があり、全体のシステムに悪影響を及ぼします。
- 3-2. 水質管理の役割
水質管理はアクアポニックスシステムにおけるバランスを維持するための別の重要な要素です。
清潔で安定した水質は、魚と植物の健康を保ち、システム全体の効率を高めます。
水質管理には、適切なフィルタリングシステムの使用、定期的な水質検査、必要に応じた施肥が含まれます。
また、水質検査の結果によって微生物の働きを把握することができます。例えば、給餌量がこれまでと変わらないにも関わらず、水中のアンモニアや亜硝酸が上昇している時には、微生物が十分に働いていないと考えられます。
4.まとめ
アクアポニックスは、持続可能な食品生産システムとして非常に有効です。
このシステムのは、複数の要素が絶妙に組み合わさることで成り立っています。重要なのは、システム内の生態バランスを適切に維持するための工夫にあります。具体的には、以下のポイントが重要となります。
システムバランス: 野菜ベッドの面積によって、そこに育つ野菜とって十分な栄養を提供する魚の匹数が決まります。このバランスは育てる野菜によっても変わるため、システム導入時にはその点も事前に決めておく必要があります。
硝化サイクルの維持: 硝化サイクルはシステムの健康を支える基盤であり、適切な水質を保ちながら、植物に必要な栄養を供給する役割を果たします。このプロセスの効率を高めるためには、定期的な水質検査と環境条件の最適化が必須です。
水質管理: 水質はアクアポニックスシステム全体の性能に直接影響を与えるため、清潔で安定した水質を維持することが必要です。これには、適切なフィルタリングシステムの運用などが含まれます。
以上のポイントを学ぶことで、アクアポニックス農場は長期にわたって安定した生産を維持できるでしょう。
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