導入コンサルテーション
【生態系の働きで野菜を育てる】アクアポニックスの循環ってどんな仕組み?
研究開発
アクアポニックスの一番の特徴でもある、循環。
魚と微生物と植物が支え合って育つ仕組みですが、具体的にどんなふうに循環しているのでしょうか。
今回は、アクアポニックスが初めての方に向けて、この循環の仕組みを説明します。
<この記事を書いている私の経歴>
・Amazonを辞めて株式会社アクポニを起業
・自社のアクアポニックス研究農場&生産農場を神奈川県藤沢市に開設
・収穫量が7倍以上、LED電気代が半額になる縦型栽培システム「水耕タワー」を発売
・世界で初めてアクアポニックスに特化した生産管理アプリ&センサーをリリース
・過去2年間で30以上のアクアポニックス農園を全国に開設(日本最大規模を含む)
・著書:「はじめてのアクアポニックス」
そもそもアクアポニックスとは
まず最初に、アクアポニックスとはどんなものなのでしょうか。
最も地球にやさしい農業
アクアポニックスは、水産養殖(魚の養殖)と水耕栽培(土を使わずに水で栽培する農業)を掛け合わせた、新しい農業。魚と植物を1つのシステムで一緒に育てます。魚の排出物を微生物が分解し、植物がそれを栄養として吸収、浄化された水が再び魚の水槽へと戻る、地球にやさしい循環型農業です。
そう、農業なんです。土を使わない、水を循環させて育てる、などの理由から、土作り、水やり、肥料、草取りは不要。植物の力で水がキレイになるので、魚の水換えも必要ありません。
循環の仕組み
では、一体どのように循環しているのでしょうか。家庭やオフィスで気軽にアクアポニックスを楽しめる「アクアスプラウト ~ さかな畑 ~ 」を例に、みてみましょう。
魚を飼うと水が汚れてしまいますが、アクアポニックスでは魚が(排泄物から出るアンモニアによって)汚した水が、微生物の力で亜硝酸塩(あしょうさんえん)という物質から硝酸塩(しょうさんえん)に分解されます。
この硝酸塩を植物が栄養として吸収して育ち、キレイになった水が魚の水槽に戻って、また同じサイクルを繰り返し、ぐるぐる循環しながら育っていきます。
循環の順番
1. 魚の水槽からアンモニアが出る
2. 微生物がアンモニアを亜硝酸塩に分解
3. さらに微生物が亜硝酸塩を硝酸塩に分解
4. 植物が硝酸塩を栄養として吸収
5. キレイな水が魚の水槽に戻る
水質チェックでシステムの健康診断
循環の仕組みが理解できると、システムの循環がいま安定しているのか、立ち上がり段階なのか、理解しやすいです。「水質チェック」という作業をすると、把握できます。
魚と植物が元気に育っていれば循環がしっかりしている証拠なので、必ずしも水質チェックをする必要はありません。ただ、魚の元気がなかったり、植物がうまく育たないときは、この作業をすることで原因を突き止め、対処することができます。
例えば、健康的なアクアポニックスの循環の状態は、こちら。
亜硝酸塩の濃度 :0.5mg/L 以下
硝酸塩の濃度 :10mg/L 以上
アンモニアと亜硝酸塩の濃度はほぼゼロが理想で、植物の栄養となる硝酸塩は1リットル中に10mg以上です。
アンモニア濃度が3mg以上、亜硝酸塩濃度が5mg以上だと、生き物にとってよくありません。なので、魚の元気がないときは水質チェックをすることで「アンモニアが多いんだ」などの発見ができます。(この場合は、エサやりの回数を減らしたり、最大で3分の1の水換えをすることで対処します)
逆に、硝酸塩がたくさんありすぎるとどうなのでしょう(150mg以上)。特に問題はありませんが、もっと植物を植えても大丈夫ですよ、ということになります。たくさんの栄養(硝酸塩)があり、いまの植物では吸収しきれていないということなんです。
ちなみに、この水質チェックは、循環が立ち上がるまでの3〜4週間の間は2〜3日に1回行うことで、水質変化に未然に気づくことができ、よりスムーズに循環を立ち上げることができます。安定してきたら、1週間に1回で十分です。
まとめ
最初は、魚や植物を日々観察するだけでも大丈夫。生き物が一番正直に循環の健康状態を教えてくれます。
ただ、慣れてきたら水質チェックもしてみることで、より目の前の生態系のことが理解できるので、ぜひやってみてくださいね。
今回紹介した商品:
アクアスプラウト ~ さかな畑 ~
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