こんにちは!ハワイでアクアポニックス研修中の大竹です。
アクアポニックスは施設園芸です。一度施設を作ると安定した収穫が見込めますが、露地栽培と比べると初期投資がかかってしまうというデメリットもあります。
しかし!ここハワイで見た農場のシステムはすべて手作り!とても安価な材料でシステムを組み、収益を安定化しています。
今回は、そのアクアポニックスのシステムについてレポートします!
<DIYアクアポニックス農場>
ili’ili farmの大きな特徴の一つは、経営者であるDan自らが作り上げたハンドメイドのアクアポニックス・システム。ここでは、DWC(Deep Water Culture)システムを採用しています。
水耕栽培設備と養殖用水槽、水を循環させる設備などが必要となりますが、これら設備の全てが手作りです。
早速その設備を見てみましょう。
野菜ベッドは腰の高さで作業が楽
まずは野菜が成長するためのベッド(野菜ベッド)です。
DWCではハイドロボールのような培地を使わず、水を張った浅いタンク(野菜ベッド)に発泡スチロールなどの板(水耕パネル)を浮かべ、その上に野菜を定植します。
ili’ili farmの野菜ベッドは地面から約80cm、だいたい腰の高さに水槽が設けられており、野菜の苗の移植や収穫はすべて立ったまま作業できます。高設にすることで作業が楽になり、スピードも上がるため、大変効率のいい設備です。
どこでも買える資材で作る
この設備をよく見ていくとホームセンターで揃うような、どこでも購入できる資材で作られていることがわかります。基礎の部分はコンクリートブロック、水槽は枠の部分に2×4の木材、床面は合板、水槽の内側には水を張るための防水シートが敷かれています。
これに加え、水を循環させるための配管と野菜に酸素を供給するためのエアレーションが水槽内に設置されています。排水用配管には水漏れを防ぐためにユニシール(パッキン)が取り付けられていました。
材料も構造もシンプルかつ低コストで、誰でも簡単に施工できる再現性の高い仕様です。
魚タンク(養殖用水槽)もシンプル構造
続いて魚タンクを見てみましょう。
魚タンクの深さは1mほどで、周囲は円形にコンクリートブロックを積み重ね、モルタルで固められています。魚タンクは500ガロン(約2000リットル)のものが全部で3つあり、1つはコンクリートブロックとモルタルのみですが、残りの二つはさらに内側に防水シートが施されています。
魚タンクには各1台、水を循環させるポンプが取り付けられており、野菜ベッドへ水を供給するほか、給水配管の先端とポンプ内に物理ろ過装置が設けられ、水の汚れをとる役割も果たしています。
更にポンプの先には、野菜ベットへ向かう配管とは別に枝分かれして、そのまま魚タンクへ戻る配管も設置されています。これは水量を調節するほか、高低差をつけて水を滝のように落下させることで、エアレーションの役目をはたしています。
酸素はとても大切
アクアポニックスでは水中の溶存酸素量(水に溶け込む酸素の量)は非常に重要な要素の一つです。酸素は魚と野菜だけで消費されるのではなく、野菜の栄養を作り出す微生物たちにも必要となるからです。
酸素が不足すれば微生物の活動に影響を与え、水中のアンモニアが分解されず水質が悪化してしまい、魚に害を与えるだけでなく、野菜にも栄養が供給されにくくなってしまいます。
溶存酸素量は水温によって変化し、水温が低いほど水に溶ける酸素が多くなります。ハワイは平均気温が高いだけでなく、強い日差しにより水温が上がりやすいことから溶存酸素量が少なくなっていると考えられます。
魚タンクにはエアレーション設備も設置されていますが、酸素が多いことよりも少ないことのほうがアクアポニックスでは問題が大きいため、人工的な滝を作り、酸素を取り込む手段を増やすことでシステムの安全性を高めています。
<農業をはじめるにはお金がかかる!>
通常の慣行農業や水耕栽培、植物工場では事業を立ち上げる際に多大な初期投資を要するケースが多くなります。
例えば稲作を専業で行う場合には、苗を育てるビニールハウス、播種機、トラクター、田植え機、コンバイン、乾燥機、もみすり機、選別機、トラックなどなど様々な機械や道具が必要となります。すべて揃えようとすると小さな農家であっても数千万の初期投資が必要です。
また見た目がアクアポニックスに近い水耕栽培や植物工場でも、数千万~数億といった単位で投資しなければ事業を始められません。国や地方自治体では農業政策によって補助金を用意していますが、新規就農者にとって初期投資が大きくなることは借入金も多くなり、リスクを抱えることになります。
初期投資を抑えた農場経営
一方、ili’ili farmは広く普及している廉価な資材を用いて材料費を抑え、Dan自ら施工することで外注費を無くし、初期投資額を抑えることで補助金に頼らない経営ができています。アクアポニックスは一見仕組みが複雑なように感じられますが、基本的な知識さえあれば比較的簡単に設備を構築することが可能です。
NFTシステムを作っています!
ili’ili farmは2エーカーの土地がありますが、現在利用されているのは1エーカーのみです。空いた土地では小規模なNFTシステムが実験中でしたが、今回、本格的にNFTを始めることになりました。システム規模は1エーカーで、43,000株を同時に生産できます。もちろん手作りで構築します。
こちらの進捗状況も今後紹介していきます!
Twitter:@aquaponic_s
Instagram:@aquaponic_s
Facebook:@ouchisaien
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