2018年5月16日から株式会社アクポニから派遣されて、アメリカ、ハワイにあるアクアポニックス農場の「ili’ili farm(イリイリファーム)」で妻と共にトレーニングを受けている大竹と申します。
私は以前から持続可能な農業や食の安全に興味を持っており、ある日何気なく見ていたTVで紹介されていたアクアポニックスと出会い、こんな農業があるのかと衝撃を受けました。
魚の養殖と野菜の栽培を組み合わせたアクアポニックスは「地球に最もやさしい農業」とも言われ、収穫できる野菜は農薬、化学肥料を使用しないオーガニック野菜です。
日本でオーガニックと呼ばれる有機農業や自然農法とも違う新たな選択肢として心惹かれました。
<私の経歴>
私は千葉の兼業農家の家庭に生まれ、幼いころから稲作や野菜の栽培を手伝いながら育ちました。父は農家でありながら農業高校の教諭でもり、常日頃から私や兄弟に食に関する知識や考え方を話していました。高校では陸上競技にのめり込んだこともあり、父から受けていた食教育に加え、自分自身でもアスリートに必要な栄養や健康的な食生活について調べるようになりました。
農業は環境破壊的な産業
大学では農業経済学を専攻し、地域農政や環境問題、食文化などについて学びます。その大学の講義の中で、ある教授が発した「農業は環境破壊的な産業」という言葉に大きな衝撃を受けました。
農業は、自然環境を破壊しながら農地を整備、農薬を利用することで本人の健康および周辺の生態系にも影響を及ぼします。加えて、多量の化学肥料によって土壌や地下水を汚染します。
だからと言ってすべての農薬や化学肥料が否定されるものではないと思っていますが、私の持っていた農業に対するイメージは大きく変わりました。持続可能な農業について興味を持ち始めたのはこの頃からです。
しかしながら大学卒業後は、農業に関係のない大手ゼネコン企業に入社。いつかは持続可能な農業を実践したいと思いつつも日々忙しく過ごしていた時、偶然TVに映ったのがアクアポニックスでした。それから自分なりに調べれば調べるほど、この技術を学びたいという思いが湧いてきました。
アクアポニックス・アカデミーを受講後にハワイへ
その後すぐに、株式会社アクポニが運営するアクアポニックス・アカデミーのアクアポニックス講座(通学コース)を受講する機会を得ました。講義ではアクアポニックスの基礎知識に加え、魚と植物のバランスやシステムの組み方、管理方法など、実践に必要となる知識全般について学ぶことができ、そこで得たモデル収支や成功事例などから、これは商業的に実践できると確信できたのです。そのままの勢いで実地研修にも申込み、先月からアクアポニックス先進国であるハワイのili’ili farmで3カ月間の研修を開始しています。
<農場の概要>
私が滞在させてもらっているili’ili farmについて概要を紹介します。場所は、ハワイ州オアフ島の西側に位置するワイアナエにあります。ワイアナエはオアフ島の中心街であるホノルルから50Kmほど離れており、オアフ島の中でも暑い地域と言われます。そのため、日中には高い気温に加え、かなり強い日差しが照りつけます。
中規模サイズの農場
ili’ili farmは、2013年に創業を開始した商業的アクアポニックス農場です。経営者のDan Chingは65歳で会社を辞めた後、この農場を始めました。農場の広さは2エーカー(約8,093㎡)で、現在利用されているのは1エーカーです。
魚を養殖するタンクは500ガロン(約1,892リットル)が3つあり、飼われている魚はティラピアのみとなっています。従業員は2018年5月現在、経営者であるDan夫妻に加え4名が雇用されている、中規模サイズの農場です。
DWCシステムと太陽光エネルギーを採用
野菜の栽培方法はDWC(Deep water culture)という野菜のベットとなる水を張った水槽に発泡スチロールなどを浮かべ栽培する方法が選択されています。野菜のベットの大きさは4フィート(約1.2m)×96フィート(約29.2m)が合計で30テーブルあり、そのほかにクレソン、空心菜用に培地を利用したものが数テーブルあります。
アクアポニックスでは水を循環させたり、エアレーションのために電気をエネルギーとして使用しますが、ili’ili farmではソーラーパネルが設置されており、エネルギーの多くは太陽光が中心となっています。
栽培されている野菜は14種類ほどです。レタス数種類に加えてネギやウォータークレス、空心菜、チンゲン菜が生産されており、レタスは個装での販売だけでなく、5種類程度のレタスをカット後、ミックスして商品化しています。
<農場での1日>15時には作業終了
ili’ili farmの作業は早朝6時から始まり、たいてい14時~15時には終了します。作業の内訳は収穫1~2時間、梱包・加工2~3時間、野菜ベットや生育用のポットなどの清掃2~3時間となっており、そのほか日によって播種や苗の移植が行われます。
労働時間は7~8時間で、仕事の進み具合によっては早く終わることもあります。ハワイは常夏の島のため、強い日差しの下での作業は過酷ではないかと考えていましたが、作業の半分は屋内作業(梱包や野菜のカット)であり、収穫も早朝の涼しい時間に終えてしまうため作業負荷は高くはありません。
水質や設備の管理が大切
上記作業とは別に経営者のDanは水質や魚の管理、システムのメンテナンスなどを担当しています。アクアポニックスではシステムが常に適切に管理されている必要があるため、この役割は非常に重要であるといえます。
例えば水を循環させるポンプが止まってしまうと野菜に必要な栄養素が提供されなくなるとともに水槽の魚にも悪影響を与え、場合によっては魚が死んでしまったり野菜が枯れてしまいます。
アクアポニックスは簡単なシステムで野菜を栽培することができる一方で、一部不具合発生すると全体に大きな影響を与えてしまいます。特に商業的アクアポニックスではシステムが家庭用と比べ大規模になるため、システムを常に管理、メンテナンスできる担当者が必要となります。
本日はここまで。これから具体的に学びを深めていきたいと思います。また書きます!
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