導入コンサルテーション
アクアポニックス事業化で失敗しないために事前に知っておくべきこと
導入コンサルテーション
アクアポニックスの事業化を検討している人
「アクアポニックスの事業化を検討しているので情報を知りたい」
「事業計画書を作るうえでのコツやツールが知りたい」
「事業化する上でのリスクを把握しておきたい」
この記事では、こういった質問に答えます。
√本記事の内容
・事業計画書をつくる際のコツ【2つ】
・よくある質問に回答
「儲かるの?」「植物工場とどちらがよい?」「ランニングコストは?」
√この記事を書いている私の経歴
・自社のアクアポニックス研究農場&生産農場を神奈川県藤沢市に開設
・収穫量が7倍以上、LED電気代が半額になる縦型栽培システム「水耕タワー」を発売
・世界で初めてアクアポニックスに特化した生産管理アプリ&センサーをリリース
・過去2年間で30以上のアクアポニックス農園を全国に開設(日本最大規模を含む)
・著書:「はじめてのアクアポニックス」
アクアポニックス事業化で失敗しないために事前に知るべきこと
アクアポニックスの市場規模
まずは全体感として市場規模からおさえましょう。
2019年2月時点で入手できる最新のリサーチによると、世界のアクアポニックス市場規模は2017年で約540億円です。2024年までに年率10%の成長を続け、1430億円になると言われています。
成長産業であることは間違いありませんが、規模としてはまだ小さいですね。慣行農法にとって代わるものではない=大規模におこなう農業ではない、とみなされているのが現状です。
次に、日本の有機農業の取組面積を見てみましょう。
緩やかに増加しているものの、現在のところ、有機農業の面積は日本全体の耕地面積の0.5%にすぎません。
日本において有機農業そのものがまだまだマイナーである一方、有機農業者の平均年齢は農業全体に比べ7歳若く、約半数が60歳未満。また、新規就農希望者の3割が有機農業での就農を希望しています。
これらをどう捉えるかはあなた次第ですが、ビジネスでは「どこで戦うか」と「時流に乗る」ことが大事なので、事前に市場規模とその動向は把握しておくとよいでしょう。
ここでは割愛しますが、養殖についても調べておくべきです。「生態系や資源に悪影響を及ぼさない養殖業の持続的開発」という視点から見ると、ここにもチャンスは多いように感じます。
参考»「アクアポニックス養殖魚の種類【完全版】メダカからチョウザメまで」
参考資料:
「有機農業をめぐる事情」 平成30年3月 農林水産省
「養殖業の現状と課題について」平成25年2月 水産庁
ブランディングを考えよう(デメリットを克服)
アクアポニックスとは、無農薬、無化学肥料、無除草剤の有機農法です。作物は極めて安全かつ高品質。慣行農法の野菜よりも当然高くで売れます。海外では2~3倍の価格で取引されることも珍しくありません。
ただし、現状では日本におけるアクアポニックス産野菜の価値は未知数。だからこそ、価値を伝え、価格に反映させるブランディングに力を入れる必要があります。
ブランディングとは、“ターゲットに対して自社の商品の価値を分かりやすく伝えていくという活動”
具体的には、商品のデザインやシンボルマーク、商標、名称、キャッチフレーズなど、様々な要素が組み合わさってブランドを形作りますが、ここで大事なことは「誰に対して」「どんな価値」を伝えるかを明確にすることです。
実際に、有機野菜(有機JASマークを貼付した商品)の販売価格は、慣行栽培と比較して1.5倍前後というデータもあります。
ただしここで安易に「では有機JAS認証を取得しよう」と考えてはいけません。
認証制度の取得、維持にかかる生産者の金銭的負担、労力は相当のものです。国はこういった認証を推奨しますが、そもそも消費者があなたを信用してくれるのでしたら不要な規格と言えるでしょう。
認証の維持にかかるコストや労力を他へ向けることでより高く販売することはできませんか?
余談ですが、有機JASは日本の有機認証(農林水産省)です。ちなみにアメリカはUSDA(農務省)という認証があり、日本の農場でもUSDAを取得することが可能です。この2つの認証は「同等の認証である」ことをお互いの国で認めています。
誰にいくらで売りますか?
「誰に対して」「どんな価値」を伝えるかが決まったら、具体的に売り先を開拓していきましょう。
失敗する方の多くに「生産への意識が高く、販売への意識が低い」という特徴があります。農業に限らず、これではどんなビジネスもうまくいきませんよね。
商品が無いのにどうやって開拓するのですか?という方もいるかもしれません。そこは創意工夫です。価値を伝えるのが目的なので、チャートや画像を使ってもよいでしょう。生産がはじまっているのに売り先が無いリスクに比べると、商品が無いくらいどうにでもなります。
先にネタバレすると、必ずしもここで売る必要はありません。ここでの反応から得られる情報を、生産やマーケティングに生かすことがより重要です。
加えて見込み客まで得られたらより良し、なのですが、あくまで最高なのは「商品が無い状態で売って先入金してもらうこと」です。
ここを目標に動けているかで、得られる情報に大きな差が生まれてきます。
何を育てますか?(利益重視で決めましょう)
売り先の開拓と同時くらいに、何を育てるのかを決めましょう。夢や理想は大事にしてほしいのですが、それは稼いでから。まずは現実的に、利益重視で決めていきましょう。
はっきりと言えることは、現状では実物野菜ではなく葉物野菜をメインにしたほうが儲かります。
5カ月かけてトマトを作るより、1ヵ月でレタスを作ったほうが儲かるので、回転重視で考えましょう。葉物野菜の品種については、売り先の反応を見ながら変えていくべきです。
参考までに、殆どのアクアポニックス農家はリーフレタスをメインに栽培しています。そして野菜と魚の売上比率は野菜が7~8割、魚が2~3割です。そうなる理由はここでは割愛しますが、殆どがこれに近い比率になります。
※養殖場の水浄化を目的として後からアクアポニックスを併設した場合を除きます。
まずは試験栽培しましょう(いきなり大きな投資はやめるべき)
アクアポニックスは施設園芸なので、施設の設計、施工はめちゃくちゃ重要です。
いきなり巨額投資をして大規模農場を作るのはリスクが高すぎます。最初の1~2年はコストを極小化して、試験栽培からはじめましょう。
施設園芸における施設とは、すべての戦略が集約されたものです。
何を、どれだけの量、どれくらいの期間で、どれくらいのコストをかけて生産する。これらはすべて施設に反映されます。あと、作業効率なども施設次第ですね。
戦略はやっていくなかで、特に最初の1年でほぼ必ず変わりますし、それが自然だと思います。それに合わせて施設を改修していると、投資回収が遅れて成功から遠ざかってしまいます。
私が常にこう言うのも、失敗を重ねてきた経験からです。本場アメリカに世界最先端の大規模研究農場をもち、農場を各地に設置、データも相当の蓄積があります。それでも農業は、その地で実際にやってみて初めて分かることがあるのです。
言い訳ですが、今の日本におけるアクアポニックスの栽培実証データは少なすぎます。過去に植物工場で何が起きたかがよい教訓です。企業や大学の実験棟でうまくいったものが、商用農場でうまくいかず倒産や赤字を抱えた企業がどれだけ多かったかは、ググれば事例はたくさん出てきます。(現在は改善されています)
さらに言うと、データを豊富に持っているアメリカの会社ですら試験栽培から入るのが通常です。100~200㎡ほどの農場で1~2年の試験を経て10倍とか20倍とかに規模を広げる、という手法を採っています。彼らの合理的で謙虚な姿勢を近くで見ていることも影響しています。
準備の量と質が成否を分けます。
いきなり数千万、数億円の投資は避けて試験栽培からはじめることが、結局は近道になるはずです。
事業計画書をつくる際のコツ
ワーストケースで考える
事業計画書や予算を作成する際、標準ケースに加え、ベストケースとワーストケースの3つがあるとします。アクアポニックスでは常にワーストケースを基準(標準)に考えましょう。
日本におけるアクアポニックスはまだまだ黎明期、数値を読むことは容易ではありません。新規事業の予実管理が難しいのと同じです。
具体的には、レタス1株の販売価格は、消費者や小売業者への販売価格ではなく、当地の卸や仲卸への販売価格にします。つまり最低価格で計算する、ということです。ここでは一切のアクアポニックス農法によるプレミアは価格へ反映させません。それは今後の努力次第なので、不確定要素は計算できないからです。
また、私の場合は魚の収益も計算に入れません。はじめたばかりの頃は、売上構成比の大きい野菜を売ることに専念すべきだからです。魚はどれだけ成長が早いものでも出荷までに半年はかかるので、野菜の後からでも間に合います。野菜だけの利益で黒字になることが分かれば、魚はプラスアルファなので、精神的にも安定しますね。
ついでに言うと、補助金も計算に入れません。アクアポニックスは、農業関連、ものづくり関連、地熱関連等、広く補助金の対象になり得るのですが、慣れない書類作成に時間をとられるのであれば、売り先や生産に集中してビジネスを安定させるほうが先決です。否定はしませんが、推奨もしないので、計算へは入れません。あくまでプラスアルファの要素ですね。
多様な収益化ポイントをおさえよう
単にアクアポニックス農場といっても、多様な収益ポイントがあります。本業と組み合わせることで更に広がりが生まれるでしょう。利益を安定させるうえで、複数の収益源を持つことをお勧めします。
事業計画書をつくる際のコツ
アクアポニックスは儲かるの?
アクアポニックスは儲かります。
野菜だけ育てる、または魚だけ育てるよりも儲かります。さらに言うと、この農法の付加価値を正しく理解して活用することができれば、作物以外の収益源も期待できます。
植物工場とどちらが良いの?
アクアポニックスの技術進化が早く、実証においても生産面で植物工場に匹敵する数値を出すようになりました
初期投資とランニングコストはアクアポニックスと植物工場でほぼ変わりませんが、アクアポニックスを作物生産だけでなく”循環をつくるツール”と捉えることでビジネスはより拡がっていきます。お家、学校、集合住宅、工場、下水処理場、街、国、そして宇宙に”循環”をつくる。アクアポニックスには非常に大きな可能性があります。
※植物工場とは、LEDライトと化学肥料を用いて屋内で行う養液栽培を指します。
※参考までに、植物工場型のアクアポニックスもあります。化学肥料の代わりに魚を用いる以外は同じシステムです。
農場のランニングコストが分かりません
農場の場所、規模など前提条件によって変わります。必要でしたら別途お問い合わせください。
まとめ
記事のポイントをまとめます。
①アクアポニックスの市場規模を把握する
②ブランディング:「誰に対して」「どんな価値」を伝えるかを明確にする
③誰にいくらで売るかを決める
④何を育てるかを決める:売り先を考えて
⑤まずは試験栽培から:いきなり大きな投資は避ける
・事業計画書や予算は、ワーストケースを基準に設定。複数の収益源を持つ
・アクアポニックスは経営が成り立つ
・農作物の販売以外でも収益源をつくる
・農場のランニングコストは前提条件を教えてもらえたら分かります
日本はまだまだ黎明期なので可能性は無限にあります。とはいえ、ビジネスですから、続けることが大事ですね。
事業化を検討している方向けには、こちらにも詳しく書いています。参考までにどうぞ。
アクアポニックス農業のメリット、デメリット、課題は?【植物工場と比較】
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