第4回では、アクアポニックスのシステムの種類について、簡単にまとめていきます。
用途や目的によっていくつか種類がありますが、各々の特徴を理解することで選びやすくなります。
アクアポニックスの原理
アクアポニックスは、 「植物」 「魚」 「微生物」 の3者が共生することで成り立ちます。
その共生に影響する要因は、 「酸素」 「PH」 「温度」です 。植物だけに影響する要因は 「光と養分」。魚だけに影響する要因は 「餌」 となります。(餌は回りまわって植物の”養分”となります)
人が行う”お世話”としては、3者が快適に過ごせるようにニコニコ見守りながら、必要に応じてこれらの要因をコントロールする、といったイメージでしょうか。
栽培者はあくまで”サポート役”
自然に起こる”自然の力”を借りて栽培を行うので、一度システムを組めば、後は積極的に人間が管理するというよりは、バランスが崩れたときにそれを整えてあげる”サポート役”に近いです。
システムの種類が変わっても、原理は同じです。
原理について分かったところで、アクアポニックスの基本的な4つのシステムをみていきましょう。
代表的な4つのシステム
システムは、大きく培地*を使うものと使わないもの2つに分けられます。
※培地・・・土の代わりに、粘土を丸めて高温で焼いたハイドロボール、火山岩、砂利などが使われる。
培地の主な3つの役割
- 植物の体を支える
- 微生物の住処となる(従って多孔質なものがより良い)
- 水の濾過
安価でメンテナンスが楽な「C/F」「F&D」
まずは培地を使うシステム。これは、大きく「Continuous Flow」(C/F)と「Flood & Drain」(F&D)の2つに分けられます。(F&Dはさらにいくつかのシステムに分けますが細かいのでここでは割愛します)
培地を使うシステムの特徴
- メンテナンスが楽
- 製作が簡単
- 初期費用が比較的安価
これに加えて、育てられる野菜の種類も、培地を使わないシステムに比べて多くなり、トマトなどの果菜類やトウモロコシなども栽培可能です。一方で、規模の拡張性には乏しい面があるため、一般的には家庭菜園向きと言われています。
安定度が高く、拡張もできる「DWC」「NFT」
次に、培地を使わない代わりに、水を使って野菜を育てるシステムです。これも大きく2つに分けられて、「Deep Water Culture」(DWC)と「Nutrient Film Technique」(NFT)があります。
培地を使わないシステムの特徴
- 拡張性が高い
- 水質・温度が安定しやすい
規模が大きなシステムに向いており、ほとんどの商業用途のシステムは、この”培地を使わないシステム”を採用しています。規模が大きいので水量が多く、水質や温度も安定します。
また、NFTは設計の自由度が高いことから、店舗内などに設置する、いわゆる”魅せるアクアポニックス”として活用されるケースもあります。
下記が、それぞれのシステムの特徴を、簡単に表にまとめたものです。参考ください。
C/F | F&D | CHOP | CHOP 2 | DWC | NFT | |
---|---|---|---|---|---|---|
野菜の栽培方法 | 培地(ハイドロボール) | 水のみ | ||||
作りやすさ | ◎ | ◎ | ◯ | ◎ | ◯ | △ |
メンテナンスのしやすさ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◯ | ◎ |
デザインの自由度 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◎ |
安定性(水質・温度) | △ | △ | ◯ | ◯ | ◎ | △ |
育てられる野菜の種類 | △ | ◯ | ◯ | ◯ | △ | △ |
サイズ | 小型 (家庭用) |
小〜中型 (家庭〜施設用) |
小〜中型 (家庭〜施設用) |
大型 (商業用) |
中〜大型 (施設〜商業用) |
それぞれ特徴があるので、用途に応じて使い分けましょう。どれか1つのシステムを選ぶだけでなく、2つを組み合わせて使う場合もあります。
今日紹介したシステムの基本形と特徴を覚えておくと、なぜそれを組み合わせたのか、その背景も理解しやすくなります。
さて、超基礎シリーズも次回で最後になります。
次回は、世界で注目されるアクアポニックスを日本に広めていくうえで、現在抱えている課題について書きます。
▼次の記事を読む
「超基礎⑤ 日本における課題とおうち菜園の取組み」
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