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アクアポニックスの超基礎② 魚で野菜が育つとはどういう仕組み?

研究開発

第2回の記事では、魚と植物の共生システムであるアクアポニックスの基本的な仕組みを解説します。

汚れた水が植物の栄養に

小さい頃に、自宅や学校などで一度は魚を飼ったことがあるかと思います。魚を飼うと、水が汚れますよね(水換えが大変!)。
もしかすると、子どものころに金魚やザリガニなどの水槽が次第に臭くなってきて、生き物が死んでしまった。なんて経験がある人もいるのではないでしょうか?

実は、汚れた水の中には魚から排出されるたくさんのアンモニアが含まれています。このアンモニアは非常に毒性が強いため、そのままにしてしまうと魚が死んでしまいます。そのため、通常は水換えが必要になるのです。

しかし、アクアポニックスでは、その汚れた水を捨てません。
むしろ、植物の栄養として有効活用します。

ただし、そのままでは植物は育ちません。
牛や鶏のフンはそのままでは使えず、たい肥化することで牛糞や鶏糞として使うことができるように、水中のアンモニアも植物が吸収できる形に変える必要があります。

アクアポニックスシステムでは、微生物の力を借りて、アンモニアが”硝酸塩”という物質へと変化させます。この硝酸塩が栄養となることで、植物がぐんぐん育ちます。
(この一連の流れを「硝化」といい、アクアポニックスのコア技術になります。アクアポニックス・アカデミーでは、より具体的に学ぶこともできます)

植物と微生物の力でキレイになった水は、また魚の水槽へと戻り、循環していきます。

このように、アクアポニックスの魅力は環境に優しく、自然の力を最大限に活用することです。
魚の排泄物が植物の成長に必要な栄養素となり、植物が浄化した水が再び魚の生息環境に戻ることで、持続可能な循環型農業ができるんですね。
さらに、アクアポニックスは農薬や化学肥料を使用しないため(使用すると魚や微生物に影響がでてしまうので)、安心・安全な野菜を食べることができることも大きなメリットです。

90%節水できる、エコ農業

これまで「魚の養殖」と「野菜の栽培」は別々のものでした。

これが合わさることで、水を90%節水することができ、野菜の生産性も上がります。
アクアポニックスは水が循環しているので、水面からの蒸発と、葉から蒸散した分のみ給水すればよいので、使う水が非常に少ないのです。
加えて、土づくり・水やり・施肥・除草、そして魚の水換えが不要となることで、作業も軽減・単純化され、コストも下がります。

つまり、アクアポニックスは環境に優しく、経済的にも効率的な持続可能な農業システムと言えるんですね。

アクアポニックスの循環の解説図

さらに、アクアポニックスのシステムは温室や室内でも設置可能で、天候や季節に左右されずに年間を通じて安定した生産が可能です。
ですから、砂漠地帯などの水資源が限られた地域でも効果的に利用することができます。
大きな目で見れば、アクアポニックスは、地球規模での水資源の節約に貢献するだけでなく、食糧問題の解決策としても可能性を持っている農業といえます。

他にも、都市部で活用するのであれば、屋上やビルの一角に小規模な農場を設置することで、ビル街でも地産地消を進めることができるようになります。
これにより、食物の輸送にかかるエネルギーやコストを削減し、新鮮な食材を地元で供給することができるようになります。

アクアポニックスで育てられる植物や魚の種類とは

アクアポニックスでは様々な野菜を育てることができますが、最も相性が良いのは葉物野菜です。
例えば、レタス、小松菜、ケール、その他にもハーブ類やエディブルフラワーなんかも元気に育ちます。(もちろん、トマトなどの果菜類も育てられます)
根菜類は難しいですが、それ以外であれば選択できる幅は思っている以上に広いです。

一方で、魚は「淡水魚」から選ぶというのが原則になります。
それは、塩分を含んだ水でアクアポニックスを行うと、野菜が萎れてしまうからです。
そのため、ティラピアやチョウザメ、錦鯉などが良く利用されています。

育てられる野菜や魚について、より詳しく知りたい方は下のブログを読んでみてください。
アクアポニックス野菜の種類【完全版】ハーブから観葉植物まで<29種類>
アクアポニックス養殖魚の種類【完全版】メダカからチョウザメまで

魚、微生物、植物の助け合い

アクアポニックスの仕組みは、魚⇔微生物⇔植物の3者が、お互いに助け合うことで生まれます。

これは、”窒素循環”という自然界の日常です。人間が何かをしなくても、自然に起きていること。すなわち、アクアポニックスとは、”自然に起こる力”を借りることで、植物や魚を育てる農業、ともいえます。

自然界で毎日おこっている循環

従って、その管理法も、野菜だけ、または魚だけのための部分最適ではなく、3者にとって快適な環境を整えてあげる、という形になります。

食料生産としてだけでなく、自然を身近に感じる、生態系が見える、食の成り立ちを考える、魚に癒される、そういった魅力が、アクアポニックスの可能性を広げているのでしょう。

次回は、アクアポニックスのメリットについて書いていきますので、お楽しみに。

▼次の記事を読む
「超基礎③ アクアポニックスのメリットは?」

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日時:毎週水曜・土曜 10:00~11:00
形態:オンライン(水曜)または弊社農場(土曜)

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