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【高温、低温にはどう対応すればよい?】季節ごとのアクアポニックス管理のポイントを解説

生産管理支援

アクアポニックスは一年中、新鮮な野菜と健康な魚を育てるための革新的な方法ですが、季節の変化はその成功に大きな影響を与えます。
夏の暑さと冬の寒さ、それぞれの季節の厳しい条件下でもアクアポニックスシステムを最適に管理する方法を学んで、1年中楽しめるようにしましょう。
この記事では、真夏の冷却方法から真冬の保温対策まで、効果的な季節対策を具体的に解説します。

1. はじめに

  • 1-1. アクアポニックスの基本と季節の影響

アクアポニックスは、水耕栽培と陸上養殖を組み合わせた持続可能な農業の1つです。このシステムでは、魚の排泄物が微生物によって分解されることで自然の肥料として植物に供給され、植物は水を浄化して魚に戻す役割を果たします。
しかし、季節による気温の変動は水温や水質に大きな影響を与え、これがシステムの効率に直接影響します。
例えば、真夏の高温は水中の溶存酸素量を低下させ、魚の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、野菜にとっても生育適温を大きく超えてしまうと、葉や果実に障害がでてしまいます。
また、真冬の低温は魚の代謝を遅くし、水中のアンモニア分解速度が落ちるため、水質が悪化しやすくなります。これらの問題に対処するためには、季節に応じた適切な管理が必要です。

ティラピアは夏の高温には非常に強い

2. 真夏のアクアポニックス管理法

  • 2-1. 高温対策:適切な水温の維持方法

真夏の暑さはアクアポニックスシステムにとっても大きな問題です。
高温は水中の溶存酸素を低下させ、魚の健康を脅かす原因となります。また、野菜にとっても根域の水温が高いことで生育が止まってしまう、根腐れするといったリスクがあります。
そのため、水温の適切な管理を行うことが非常に重要になります。
具体的な方法として、冷却システム(チラー)の導入、遮光ネットの使用などがあります。
サーキュレーターなどで水面に風を当てるのも、原始的ですが効果があります。
その他にも、地下水を利用しているシステムであれば、定期的に換水をするのも1つの方法です。
また、水槽に直射日光が当たる場所を避け、自然の風を利用できる位置に設置することで、冷却効果を高めることができます。

チラーを設置したアクポニハウス(右下)
  • 2-2. 光管理と植物の保護

夏季の強い日差しは、植物にとってストレスとなり得ます。適切な日陰を提供することで、光合成を助け、水温の上昇を防ぎます。
遮光ネットを利用したり、植物の配置を調整することで、直射日光の影響を軽減できます。私たちの農場でも夏場は遮光ネットを活用しています。
また、ビニールハウスの側面を巻き上げ式にする、ハウスの軒高を高くして熱を逃がすなどのハード面での対策も可能です。
しかし、完全閉鎖型に比べるとビニールハウス内の温度を下げきるのは難しいので、夏はハーブ類などの比較的暑さに強い植物に変えてしまうのも大事な選択肢になります。

バジル、シソ、パクチーなどのハーブ類に植え替えるのも方法のひとつ
  • 2-3. 魚の健康管理

高温期においては、魚のストレスを最小限に抑えることが重要です。
酸素供給の増加、水質の定期的なチェックと調整、適切な餌やりが求められます。
また、熱帯魚でない限り、種によっては特に高温に敏感なため、種選定も重要になります。特に渓流魚といわれるような魚(アユ、ウグイなど)は生育適温が低めになります。
一方で、ティラピア、チョウザメ、鯉などは比較的高温にも強く、飼育がしやすいと思います。私たちの農場でも、水温が40℃近くになることがありますが、ティラピアや鯉は元気に泳いでいます。

3. 真冬のアクアポニックス管理法

  • 3-1. 低温対策:ヒーターシステムと断熱方法

真冬の寒さもアクアポニックスシステムにとっては影響があります。
低温は魚の代謝を遅らせるだけでなく、水中のアンモニア分解速度を落としてしまいます。そのため、他の季節に比べて水質が悪化してしまう可能性もあります。
これに対処するためには、水槽に適切なヒーターを設置し、断熱材を利用して温度を管理することが重要です。ヒーターは自動温度調整機能付きのものを選ぶと、一定の温度を維持しやすくなります。
また、水槽の下には必ず断熱材を敷くようにします。これによって、底面からの熱の出入りを抑えることができます。

水温調整に使用する投げ込み式ヒーター
  • 3-2. 植物の冷害防止策

アクアポニックスで栽培することが多い葉物野菜は、比較的寒くても耐えられるものが多いので、夏場と比較するとそれほど管理は難しくありません。
とは言っても、生育適温を大きく下回ってしまうと、低温障害や生育を止めてしまうこともあるので、適切な管理は必要になります。ビニールハウスであれば、ハウス内側に断熱性のあるシートを入れる、温風暖房機を入れるなどの方法があります。
アクポニハウスでは水温管理と断熱シートだけで、真冬でもトマトやキュウリなどを栽培できています。

  • 3-3. 魚の寒冷期におけるケア

冬期における魚のケアでは、水温の急激な低下を防ぐことが最も重要です。
水温が急に下がると、魚はストレスを感じやすく、免疫力が低下することがあります。
種によって冬の寒さに強い魚とそうでない魚がいるため、適切な魚種を選ぶことが重要です。例えば、ティラピアは暑さには強いですが、寒さには弱く、15℃を下回ってしまうと死んでしまいます。
また、低水温では微生物の働きが弱くなってしまい、アンモニアを分解できずに水質悪化につながることで魚が死んでしまう可能性もあります。
そのため、ヒーターなどを用いて20℃以上を維持できるようにしておきましょう。

チョウザメは意外にも生育適温が広い

5. まとめ

アクアポニックスシステムは、真夏の高温や真冬の低温といった季節の変動によって大きく影響を受けることがあります。
これらの課題に対処するためには、適切な温度管理、光管理、そして魚と植物の健康を維持するための細心の注意が必要です。
高温期には冷却システムの使用や遮光材の活用で水温を管理し、低温期にはヒーターの使用や断熱材で環境を整えることが効果的です。
また、年間を通じて水質管理とシステムのメンテナンスを行うことで、システムの効率を最大化し、持続可能な運用を実現します。
アクアポニックスを成功させるためには、これらの管理技術を適切に実施し、常に環境に注意を払うことが重要になります。

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この記事の内容についてさらに詳しく知りたい方は、こちらのブログがおすすめです。
アクアポニックス野菜の種類【完全版】ハーブから観葉植物まで
アクアポニックス養殖魚の種類【完全版】メダカからチョウザメまで

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